私の中では、倍賞千恵子さんと言えば、あの ” フーテンの寅さん ” の『 お兄ちゃん想いの優しい妹・ さくら』 というイメーがどうしても強いのですが、本作の ” 角谷ミチ ” の彼女は、さくらとは、また違ったイメージの役柄で、どちらも悲哀を感じないではいられない女性です。
バスの車窓から、通り過ぎる景色を見つめる角谷ミチの顔。スクリーンに薄暗く映し出されているのですが、だんだんと陽が陰ってきて、やがて表情すら読み取れない程に暗転・・・。台詞も無く、ただただスクリーンに表情だけが映し出されていきます。倍賞千恵子さんの静かな演技、素晴らしいです。
磯村勇斗(市役所職員でPlan75申請窓口担当)と、ステファニー・アリアン(フィリピン出身のケアワーカー)、河合優実(コールセンター担当)は、仕事に疑問を感じながら、そして戸惑いを感じながらも、自分の成すべき事が何なのかを模索していきます・・・。
マリア役を演じたステファニー・アリアンのメイクについてですが、彼女の太くて真っ直ぐな眉毛が特徴的で、とても印象に残っています。また、成宮瑶子役の河合優実の演技からは、疑問や戸惑いといった、内なる感情が見える様でとても感動しました。
重いテーマに演技が輝る、映画『 PLAN 75 』
スクリーン全体を通して、シーンの明暗、コントラストが暗い、そんな感じがしました。それは多分意図的なものだと思います。とても難しいテーマの作品で、何度も観ないと作品の本質は計り知れないのではないかとも想えてきます。
人の心情を推し計る事は難しい・・・、ですが、ラストシーンで倍賞千恵子さん演じる ” 角谷ミチ ” の胸の内に湧きあがったであろう感情は、私にも読み取れた様な気がします。お奨めです。
※2025.06.19 (木) 13:00~14:54に、NHKBS (101ch) にて放映された作品を録画し視聴。

☆あらすじ☆ 作品の本質に演技が輝る、映画『 PLAN 75 』
超少子高齢化社会を迎え、75歳以上の高齢者が自ら死を選ぶことができる制度<プラン75>が施行された日本の近未来の姿を描いた衝撃的作品です。
夫と死別し一人暮らす78歳の角谷ミチ(倍賞千恵子)は、高齢を理由にホテルの客室清掃の仕事を突然解雇され、生活の困窮から<プラン75>の利用を真剣に検討することになります。
岡部ヒロム(磯村勇斗)は、市役所で<プラン75>の申請窓口を担当しますが、制度を説明する日々の中で、内心、次第に疑問を抱くようになります。
フィリピンから来日したケアワーカーのマリア(ステファニー・アリアン)は、家族を支えるため制度の関連施設で葛藤しながらも働きます。
死を選んだ高齢者のサポートをするコールセンターで働く成宮瑶子(河合優実)は、制度に疑問を抱きながらも日々の業務に向き合います。
制度と関わる人々それぞれが、どう向き合うのかを、問いかけられ、考えさせられる物語です。貴女には、この物語がどう写るのでしょうか?
☆基本情報☆ 作品の本質に演技が輝る、映画『 PLAN 75 』
- 邦 題:PLAN 75
- 公開年:2022年6月17日に劇場公開(日本) ※2023年3月12日:WOWOWでもテレビ初放送
- 製作国:日本・フランス・フィリピン・カタール(合作) 国際共同製作映画
- 上映時間:約112分
- ジャンル:SFヒューマンドラマ、社会派ドラマ
- 製 作:『 PLAN 75 』製作委員会
- 制 作:D・デッド・フィルムズ
- エグゼクティブプロデューサー:小西啓介、水野詠子、國實瑞惠、石垣裕之、フレデリック・コルベス、ウィルフレッド・マナラング
- プロデューサー:水野詠子、ジェイソン・グレイ、フレデリック・コルベス、マエバ・サビニエン
- 配 給:ハピネットファントム・スタジオ
- 映倫区分:G ※映倫区分Gとは、General Audience(すべての観客)つまり、年齢にかかわらず、どなたでもご覧頂ける作品に与えられる区分です。
- 映倫番号:123415 ※日本の映画倫理機構(映倫)により付与された作品番号です。
- 第75回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で、新人監督作品特別表彰受賞
- 文化庁文化芸術振興補助他 助成
☆スタッフ☆ 作品の本質に演技が輝る、映画『 PLAN 75 』
- 監督:早川千絵(長編デビュー作)
- 脚本:早川千絵、ジェイソン・グレイ(共作脚本)
- 編集:アンヌ・クロッツ
- 音楽:レミ・ブーバル
- 撮影:浦田秀穂
- 照明:常谷良男
- 美術:塩川節子
- 録音:臼井勝
☆主なキャスト☆ 作品の本質に演技が輝る、映画『 PLAN 75 』
- 俳優名:(役名):
- 倍賞千恵子(角谷ミチ・78歳未亡人でホテル清掃員)
- 磯村勇斗(岡部ヒロム・市役所職員でPlan75申請窓口担当者)
- たかお鷹(岡部幸夫・ヒロムの叔父)
- 河合優実(成宮瑶子・コールセンター担当員)
- ステファニー・アリアン(マリア・フィリピン出身のケアワーカー)
- 大方斐紗子(牧稲子)
- 串田和美(藤丸釜足)
- 中山マリほか
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